イギリスのコンピュータに関する教育はとても進んでいます。2014年にそれまであったICTという情報科の授業をコンピューティングと改め、日本の中学校までに当たる義務教育で必修科目としました。コンピューティングとは聞きなれない言葉ですが、コンピューターを使って課題を解決する(wiki)というくらいの意味です。このコンピューティング科のナショナルカリキュラムの内容が非常に踏み込んだ内容になっているのです。
The national curriculum in England Key stages 1 and 2 framework document
The national curriculum in England Key stages 3 and 4 framework document
驚く点をピックアップすると、
- 小1までに、簡単なプログラムを作成し、デバッグすること。
- 小1までに、技術を安全かつ敬意を持って使用し、個人情報を守ること。
- 小5までに、プログラムで逐次処理、条件分岐、繰り返しを扱うこと。変数や様々な形式の入出力を扱うこと。
- 中2までに、少なくとも1つがテキストベースである2つ以上のプログラミング言語を使用できること。
- 中2までに、AND、OR、NOTなどの簡単なブール論理と、その使い方の一部を回路やプログラミングで理解すること。
- 中2までに、複数のアプリケーション、可能なら様々なデバイスを選び、使い、組み合わせ、データの収集・分析や既存ユーザーの要望への対応など、挑戦的な目標を達成するクリエイティブなプロジェクトを実行すること。
イギリスの義務教育は日本より1年早く開始されます。
- 年長さんと小1がKS1(小学校前期)
- 小2から小5がKS2(小学校後期)
- 小6から中2がKS3(中学校前期)
- 中3から高1がKS4(中学校後期)
日本の学年との対応はこちらの有限会社オックスフォード・インターナショナル・エクスチェンジのサイトが理解しやすかったです。
とても興味深いので、学校の教科書を手に入れてみたいのですが、イギリスの教科書を手に入れる方法をご存知の方いらっしゃったら是非教えてください。Amazonでは買えないようです。いくつかデジタル教科書のようなサービスがありますので内容を見ることができます。
BBC Bitesize
BBCが運営する中学校相当(KS3)までの学年に対応した学習支援サービスです。BBCはマイクロビットと呼ばれる教育用コンピューターボードを国内のすべての学校に配布したこと話も有名です。
Education Quizzes
こちらは月額9.95ユーロ(1200円くらい)の営利サービスで、KS1のコンピューティングクイズがあります。
以下、Google翻訳に助けられながらの拙訳です。
コンピューティングを学ぶ目的
質の高いコンピューティング教育は、世界を理解し変えていくため、どのようにコンピュータ的思考や創造力を使えば良いかを生徒にもたらします。コンピューティングは数学、科学、デザイン、技術と深くつながり、自然のもの、人工的なもの双方に対する知見を与えます。コンピューティングの核は生徒たちが情報と計算の原則として学ぶ、コンピュータサイエンスです。
- デジタル機器がどのように動くのか
- プログラミングを通じてこれらの知識をいかに活用するか
これらの知識や理解を得る過程で、生徒たちは情報技術を使いプログラムやシステム、コンテンツを作ることを学びます。コンピューティングはまた、生徒たちが未来の職場や、デジタル世界の主人公として活躍するのに相応しいレベルのデジタルリテラシー(ICTを使い、表現し、アイデアを深める)を備えることを保証します。
コンピューティング科の狙い
すべての生徒が、
- 抽象概念、ロジック、アルゴリズム、データ表現を含む、コンピュータサイエンスの基本原理と考え方を理解し、活用できること。
- コンピュータを利用して問題を分析でき、解決するためのプログラミングを繰り返し体験していること。
- 最先端や初めて使うものも含め、問題を解決するために、情報技術を評価し、活用できること。
- 責任、能力、自信、想像力をもったICTの利用者であること。
Key Stage 1 (年長から小1)の到達目標
- アルゴリズムとは何であるかを理解する。デジタル機器の中でどのようにプログラムとして実装されるか。プログラムが正確で明白な手順に沿って実行されること。
- 簡単なプログラムを作成し、デバッグすること。
- 論理的推論を使用して、簡単なプログラムの動きを予測すること。
- 目的を持って技術を使い、デジタルコンテンツを作成、整理、格納、操作、検索すること。
- 学校以外での情報技術の共通的な使われ方を認識すること。
- 技術を安全かつ敬意を持って使用し、個人情報を守ること。インターネットや他のオンラインテクノロジーのコンテンツや接触に関する懸念がある場合には、どこからサポートを得ればよいのか認識すること。
Key Stage 2 (小2から小5)の到達目標
- 物理システムの制御やシミュレーションを含む特定の目的を達成するプログラムの設計、作成、デバッグを行うこと。問題を小さく分解して解決すること。
- プログラムで逐次処理、条件分岐、繰り返しを扱うこと。変数や様々な形式の入出力を扱うこと。
- 論理的推論を使用して、単純なアルゴリズムの仕組みを説明し、アルゴリズムやプログラムのエラーを検出して修正すること。
- インターネットを含むコンピュータネットワークを理解すること。WWWなど、複数のサービスを提供する方法。コミュニケーションとコラボレーションの仕方。
- 検索技術を効果的に使い、デジタルコンテンツを評価する上で結果がどのように選択され、ランク付けされ分類されているかを理解すること。
- データや情報を集め、分析、評価、提示する様々なプログラム、システム、コンテンツを設計し、作成するために、様々なデジタル機器の上で様々なソフトウェア(インターネットサービスを含む)を選び、使い、組み合わせること
- 技術を安全に、丁重に、責任を持って使用すること。許容可能な/許容できない振る舞いを認識すること。コンテンツと接触に対する懸念を報告する様々な方法を認識すること。
Key Stage 3 (小6から中2)の到達目標
- 実世界の問題や物理システムの状態、振る舞いをモデル化する計算上の抽象化を設計、使用、評価すること。
- ソートや検索などの、コンピュータ的思考を反映するいくつかの重要なアルゴリズムを理解すること。論理的推論を使用して、同じ問題に対する代替アルゴリズムの有用性を比較すること。
- 少なくとも1つがテキストである2つ以上のプログラミング言語を使用して、さまざまな計算上の問題を解決すること。リスト、表、配列などのデータ構造を適切に使用すること。プロシージャーまたは関数を使用するモジュラー・プログラムを設計および開発すること。
- AND、OR、NOTなどの簡単なブール論理と、その使い方の一部を回路やプログラミングで理解すること。数字を2進数で表現する方法を理解し、2進数の足し算、2進数と10進数の変換など簡単な演算を実行できること。
- ハードウェアとソフトウェアがコンピュータシステムを構成していると理解すること。それらが互いにや他のシステムとどのように通信するかを理解すること。
- 命令がコンピュータシステム内でどのように格納され実行されるかを理解すること。テキスト、音声、写真など様々な種類のデータが2進数字でデジタルに表現され、操作されると理解すること。
- 複数のアプリケーション、可能なら様々なデバイスを選び、使い、組み合わせ、データの収集・分析や既存ユーザーの要望への対応など、挑戦的な目標を達成するクリエイティブなプロジェクトを実行すること。
- 信頼性、デザイン、ユーザビリティに注意して、特定のオーディエンスに対してデジタル作品を作成、再利用、改訂、再定義すること。
- オンライン上でのアイデンティティーとプライバシーの保護を含め、技術を安全に、丁寧に、責任を持って、セキュアに使用するための様々な方法を理解すること。不適切なコンテンツ、接触、行動を認識し、懸念を報告する方法を理解すること。
Key Stage 4 (中3から高1まで)の到達目標
すべての生徒は、情報技術とコンピュータサイエンスを、より高いレベルの学業や職業に活かせるように、学ぶ機会を与えられなければならない。
- コンピュータサイエンス、デジタルメディア、情報技術における能力、創造性、知識を深めること。
- 分析、問題解決、設計、および計算思考スキルを深め、活用すること。
- オンラインプライバシーとアイデンティティを保護する新しい方法、様々な懸念を特定し報告する方法など、技術の変化が安全性に与える影響を理解すること。